学校健診問題
京都府長岡京市では2022年度より、上半身裸での学校健診では、たとえ医師の前であっても男女とも胸だけは隠すことのできるやり方に変えて欲しいと求める、小・中学校の子どもと保護者の声が高まっています。
私は2022年9月に一般質問でこの問題を取り上げましたが、「上半身脱衣が必要」との市の姿勢は変わりませんでした。そこで保護者を中心として署名活動が行われ、わずか1ヶ月弱の間に、市内在住の方だけで5,000筆の署名が集まりました。
調べてみると、京都府乙訓地域以外では着衣のまま健診を実施しているところも多く、京都府においても中学校では約7割が着衣という状況です。保護者の皆さんからは、「今でもこんなやり方で健診をしていることに驚きしかない」「多感な年齢の子どもたちが、学校で知らない異性の医師の前で上半身裸になるのは、心の傷の方が大きいのでは」「子どもが嫌だと思っているけど、子どもも保護者も内申書が気になり、それを言えない」などの声があがりました。
5,000人の市民による署名が提出され、教育委員会定例会で審議されましたが、市は「正確な健診をするためには脱衣が必要」との理由で不採択としました。
他の自治体では着衣で実施しているところも多いため、私が脱衣を必要とする医学的根拠を挙げるよう議会に求めたところ、学校健診において「乳頭部分を見せる医学的、科学的根拠は見当たりませんでした」という答弁が出されました。それでも市は、胸郭や胸の皮膚の確認をするため上半身の脱衣は必要だと主張しています。そこで、「学校健診を考える全国議員の会」を立ち上げ、国会議員を含む超党派109名の議員の署名と要望書を、文部科学省・阿部俊子副大臣(当時)に提出しました。
市は脱衣の理由として、「脊柱側湾症を見つけるため」であることを主張していますが、背中をめくる時に乳頭部分は隠せます。さらに2024年1月22日には、文部科学省から原則着衣、可!との通知が全国に出されました。今後は、市が主張する脱衣の方法だけでなく、そもそも「脱ぐ/脱がない」については子ども自身が決めることができる選択制の健診や、脱衣(背中をめくる)/着衣のどちらであっても、男女とも胸を隠せる健診になるよう引き続き取り組み、思春期の子どもたちの心を第一に考えた学校健診のあり方の検討を、今後も求めていきます。
『上半身脱衣での学校健診』についてのこれまでの取り組み
【2022年】
7月 岡山県での学校医の盗撮が報道され、長岡京市内の保護者数名から相談を受ける。
8月 長岡京市教育委員会に、上半身裸ではなく、体操服での健診はできないかを問い合わせる。
▶「乙訓医師会や学校医から、上半身は脱衣でないと正確な健診は出来ないと言われている」旨の回答があった。
9月 長岡京市議会定例会一般質問で「上半身脱衣での小中学校での学校健診」を取り上げる。
▶「2023年度も脱衣健診のままで行う」という答弁が出される。
10月 市内在住の保護者によって「子どもたちの安心できる健康診断をめざす会」が発足する。
11月 京都府長岡京市民限定で、1ヶ月の間に5,000筆以上の署名が集まる。
【2023年】
3月 「上半身は脱衣でないと正確な診断ができない」との理由により、5000筆以上の署名は教育委員会定例会で不採択となる。
12月 長岡京市議会定例会一般質問で、2024年度も上半身脱衣の健診のままであることを確認する。
「子どもたちの安心できる健康診断をめざす会」が文部科学省に対して、子どもたちの困っている現状(上半身脱衣でないと学校で健診を受けることができないこと)を伝える。
【2024年】
1月 文部科学省より、検査・診察時には体操服等を着用するという「原則着衣」の通知が出される。
2月 記者会見を実施。「子どもたちの安心できる健康診断をめざす会」副代表、当事者であった20代女性、弁護士、医師、司法書士、川口が参加した。
3月 この問題について定例会で一般質問をしたところ、「正確な健診をするためには上半身の脱衣が必要」という理由により、医師の診察前まではエプロンタオルなどでも隠して良いが、診察中は胸までめくるという答弁が出される。
6月 学校健診では「乳頭部分を見せる医学的、科学的根拠は見当たらない」旨の答弁が教育長出されるが、それでも市は、胸郭や胸の皮膚の確認をするため、上半身脱衣は必要だと主張した。
「学校健診を考える全国議員の会」を発足
7月 文部科学省・阿部俊子副大臣に対して、国会議員を含む超党派議員109名の署名及び申入書を提出する。
このとき、長岡京市内の小・中学生だけでなく、京都府や兵庫県西宮市の高校生に対しても正確な診察をするために上半身脱衣で健診を行っていること、群馬県みなかみ町では成熟のバランスを確認するためにパンツの中まで目視したり、乳房の発育を確認する目的で服を胸までめくったりするなどの診察が行われており、子どもたちの羞恥心や心情を軽視した状況にあることを伝えた。
8月 日本医師会の渡辺常任理事が、この問題の報道を受けて、「医師に対する遠慮から、学校側が意見を言いづらい状況もあるのではないか。学校と学校医の連携を密にする必要がある」と話し、文部科学省と協力し、学校と校医が健診前に検査項目などを互いに確認するためのリーフレットの作成を進めるというコメントを出した。
9月 イギリス・ガーディアン紙で、日本のトップレスの学校健診が取り上げられる。
海外在住の国連職員の方から、日本の学校健診の現状について「学校健診を考える議員の会」へ問い合わせがあった。
【2025年】
4月〜6月 長岡京市でも「胸を隠したいとの申し出が家庭からあれば、健診時の着衣もOKになる」という通知が、学校から保護者向けに出されました。
しかし、胸を隠したいとこども本人だけが訴えてもその主張は認められず、結果的にこどもが泣いてしまったというケースも出てきました。
そこで6月議会では、このことを指摘しました。その結果2026年度からは、家庭からの申し出に加えて本人の訴えのみでも、健診時に胸を隠せる方針に変わることが決まりました。
「学校健診を考える全国議員の会」では、健診の手法が脱衣(背中をめくる)、もしくは着衣のどちらであっても、男女とも胸を隠せる学校健診になるよう、引き続き取り組んでいきます。
ニュース記事など
ニュースアーカイブ
関西テレビウェブサイトアーカイブによる、2022年12月9放送分の上半身脱衣健診問題の特集及び、Youtub動画を掲載しています。